覚えて得する秋の七草のすべて
2014.10.20生活 , 生活の知恵季節も秋に差し掛かり、だいぶ気温も涼しくなってきました。
ところでみなさまは、秋の七草というものをご存知でしょうか。七草と一言に言っても、『七草粥』などに使われる“七草”と『秋の七草』は、実はまったくの別物なのです。
食することのできる通常の七草とは違い、観賞用であるために、極端に覚える機会の少ない『秋の七草』ですが、今回はそんな『秋の七草』について、それぞれを取り上げながら、その覚え方をご紹介します。
萩(はぎ)
いわゆる『山萩』とも呼ばれる山中に咲く花で、見た目は可憐な花なのですが、実はマメ科の植物でもあります。よく見ると花弁が落花生に似ているため、観察してみるとマメ科の植物であると納得できるでしょう。
もっとも通った呼び名は『宮城の萩』であり、これは萩の学名としても扱われています。実は夏の時期から咲き続けているため、早い場所では六月ごろから秋にかけてみることができる、寿命の長い花です。
名前の由来は『はえぎ(生え芽)』からきており、毎年同じ茎から新しい芽が出てくる事から由来しました。そのため、茎は丈夫で箒の材料になったり、煎じて飲めばめまいやのぼせに効く良薬にもなったりします。
秋の風物詩として有名な花であるため、『秋の七草』としても覚えやすい部類かと思います。覚え方としては、秋に草冠を乗せると“萩”になるので、秋そのものと関連付けるようにすると覚えやすいでしょう。
薄(すすき)
稲穂にも似た風情あるたたずまいの植物、それが薄です。その見た目に違わず、イネ科の植物であり、米や麦の親戚さんです。
日本では、月見の際のお供え物として定着している植物です。意識して探せば、近所の草場にもよく生っている、割とポピュラーな植物です。時には茅(かや)と呼ばれて、昔は生活用品の材料としても使われていました。茅葺屋根などがその代表です。
なぜ“すすき”と称されるのかは諸説ありますが、『スス(真っ直ぐに)と生える』から“スス生”(すすき)と呼ばれ、それが語源になったのだといわれています。
中秋の名月には欠かせない植物であるため、覚える際にも、月見を始めとした“月”と関連付けて覚えると良いでしょう。観賞用である『秋の七草』の中でも時に手に入りやすく、自生分布が広いこともあり、目にする機会も多いため、月見の度に添えるよう心がければ、忘れることも少ないでしょう。
桔梗(ききょう)
紫、または白い花弁を持つ、美しさで有名な桔梗の花も、『秋の七草』の一つです。キキョウ科という名目があるほどに有名な花であるため、花屋さんへ足を運べば必ずといってもよいほど置いてある、日本における代表的な花の一つです。
その見た目の美しさから、多くの人に愛される桔梗の花。昔のお武家さまにも人気があり、家紋に桔梗が入る、いわゆる“桔梗紋”が大流行した時もあったらしく、日本人には馴染み深い花です。
ただし、『秋の七草』に数えられているにもかかわらず、その見ごろは六月から八月までと、実は夏の花であるため、秋に目にする機会はというと、残念ながら少ないといえる花でもあります。
そのため、『秋の七草』の中でも、桔梗は覚えにくい部類の植物であると言わざるを得ません。名前自体は有名ですが、『秋の七草』数えられていることは、知らない人もかなり多いかと思います。
どうしても忘れてしまう場合は、初秋の誕生花であることを覚えておくとよいでしょう(九月の二日は桔梗が誕生花)。多少無理やりにでも秋と関連付けることができれば、元々の有名性から、『秋の七草』として覚えやすくなると思います。
撫子(なでしこ)
大和撫子でおなじみの撫子の花。美しく気品のある女性を表すその名の通り、見た目が麗しく風情の溢れる花です。これも、『秋の七草』の一つに数えられます。
これも桔梗と同様に、夏場に咲く花ですが、遅咲きの品種も多くあるため、秋に目にする機会も少なからずあるかと思います。日当たりのよい場所なら頻繁に自生していることもあるため、高原や草原であるならば、探せば意外と簡単に見つけることができます。
しかし、特徴が桔梗と似通っていることもあり、『秋の七草』としては、やはり覚えづらい部類の一種ではあります。そこで、撫子が『秋の七草』であると覚えるのに手っ取り早いのが、万葉集の存在です。
実はこの撫子の花、万葉集の中では秋の季語として使われている場合が多く、有名な俳句を一つ覚えておくだけで、撫子が秋を代表する花だと覚えやすくなります。
一つその俳句の例を挙げるならば、『野辺見れば 撫子の花咲きにけり わが待つ秋は近づくらしも』(作者不明)などが、秋と連想しやすくてよいかと思います。
葛(くず)
葛餅の原料として知られるこの葛も『秋の七草』であり、その強い生命力から、縁起の良いものとされています。
とにかく生命力の強い植物で、芽が出てから開花するまでに、ものによっては十メートル以上にも成長します。そのため、昔から様々な用途で人々の生活に取り入れられてきた経緯のある植物です。
葛餅に使うくず粉はもちろん、根から抽出したものは葛根として漢方薬になり、普段よく目にする葛根湯の原料になります。また、つるの部分には丈夫な繊維が詰まっており、葛布(くずふ)と呼ばれる織物につかわれる、葛糸を紡ぐこともできました。
そうして、人々の生活に溶け込んでいた葛は、必然と『秋の七草』に数えられるようになりました。その見た目も特徴的で、見る角度によって白や紫に色が変わって見られたことから、観賞用の植物としても人気があったようです。
とはいえ、現在ではマイナーな植物であるため、『秋の七草』の中では忘れられがちな植物でもあります。葛の存在を忘れないためには、上記のような経緯を覚えておくのをお勧めします。そうすれば、親しみのある植物として覚えておけるのではないでしょうか。
藤袴(ふじばかま)
『秋の七草』のなかでも一二を争う知名度の低い花、それが藤袴なのではないでしょうか。
見た目は紫色の小粒な花が密集して咲く特徴的なもので、見た目からは想像できませんが、菊の仲間です。この花弁の形が袴のように見えることから、この名が付きました。
ほのかに桜の香りがするのが特徴で、平安時代から香水や芳香剤として使われることが多い花であり、お茶として飲まれることもあったようです。また、利尿剤としての効果があり、薬用としてもちいられることも少なくなかったとか。
現代でこそ見る機会の少ない花ですが、大昔の人々にはこよなく愛され、それゆえに『秋の七草』に数えられるようになったようです。丁度、秋真っ盛りに見ごろを迎えるので、機会があれば、花壇や庭に埋めてみるのもよいでしょう。
『秋の七草』として覚えておくにはやや難度が高い花であるため、よく忘れられがちですが、名前の語呂がよく、見た目も特徴的であるため、実物を一度見ておくのが覚えるうえで一番確実な方法かと思います。秋を代表する花であるため、藤袴を季語に俳句を読むなどすればより鮮明に覚えておけるでしょう。
女郎花(おみなえし)
よく、美しい女性を花にたとえることはありますが、この花はそれに逆行し、“どんな美女をも圧倒する美しさ”、という意味でおみな(女性)をへし(圧倒する)するという名前が付きました。
『秋の七草』に数えられるのもその美しさゆえといわれ、黄色く清楚なその花が山野に溢れるさまは、一度見たら忘れられない光景だと伝えられています。
あまり聞く機会のない名前かとは思いますが、今でも公園などで見かける機会は多く、名前さえ一度聞いておけば、『秋の七草』の一つとして、覚えやすいかと思います。
余談ですが、同じ女郎花の仲間に、白く大きな花をつける男郎花(おとこえし)という名はもあります。その名の由来は言わずもがな。『秋の七草』ではありませんが、機会があれば見てみるのも一興です。
おわりに
ここまで『秋の七草』を取り上げてはみましたが、人によっては、すべて覚えるのが難しいと感じるかもしれません。そこでお勧めしたいのが、“短歌”として暗記してしまう方法です。
つまり、上記の七草の名前を、五・七・五・七・七に分けて、歌にするのです。例として『ハギ・キキョウ / クズ・フジバカマ / オミナエシ / オバナ・ナデシコ /秋の七草』と、区切ってみると、ピッタリ、五・七・五・七・七に分かれ、短歌が完成します。当然、短歌なので語呂がよく、比較的簡単に暗記が可能です。上記の一つ一つの『秋の七草』のことも踏まえつつ、この短歌を覚えておくとよいかと思います。
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