総務担当者必読 企業の防災対策のポイント

2014.11.04仕事 , 災害対策
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2011年の東日本大震災を機に、企業でも防災対策の必要性が声高に叫ばれています。

しかし、現実にはなかなか浸透せず、特に中小企業の場合は、防災に関する専門的知識の不足や経費の不足を理由に対応が遅れているのが現状です。

一方、企業が計画的・組織的に災害への備えを行うことは、リスクマネジメントの一環として取引先企業や市場から高く評価され、スポンサーや顧客からの信頼を得ることができます。

平素から防災対策に取り組むことは、企業として十分なベネフィットがあるものであることは間違いありません。

 

企業の防災対策の目的

企業にとっての防災対策とは、「従業員や周辺人民の安全を確保すること」が第一優先事項であることは当然ですが、次に「二次災害を最小限に食い止めること」、「事業や資産の損害を最小限にとどめること」、「事業の継続や早期復旧を可能にすること」が目的です。

企業が早期復旧することは、家庭や社会への貢献につながります。そのため企業の防災対策には、多くの役割と社会的責任があるのです。

 

防災対策の項目

企業の防災対策をいくつかご紹介します。これらの項目は業種や企業の規模、従業員の勤務形態によっても異なりますので、それぞれの会社や事業所に合った対策を立ててください。

防災項目は多岐にわたるため、会社のための「防災対策マニュアル」を作成し、定期的にメンテナンスするようにします。

 

  1. 緊急時の役割分担リストの作成と周知

防災設備の点検や、消防活動における責任者と役割分担を決めておきましょう。主な役割には以下のようなものがあります。

・      火元取締責任者

・      危険物担当者

・      防災用品・非常食担当者

・      防災訓練・教育担当者

・      電気設備/建物・施設担当者

定期的に会議を開き、防災訓練などの予定を確認します。

 

  1. 緊急連絡網の作成

災害時の緊急連絡網を作成します。

災害発生時は速やかに指定された次の従業員に連絡します。次の従業員に連絡が取れない場合は、その従業員を飛ばして次の従業員へ連絡し、その旨を各連絡網のリーダーまで連絡します。

電話がつながりにくい状況になった場合の連絡方法(災害用伝言ダイヤルなど)を定め、使用方法を周知しておきます。

なお、連絡先リストは個人情報のため、必ず従業員や関係者の同意を得たうえで作成し、取扱いには厳重な注意を払ってください。

 

  1. 防災訓練と教育の実施

訓練と教育

定期的に防災訓練を実施します。防災訓練には、避難・誘導訓練、救出・救護訓練、出火防止訓練などがあります。防災訓練に合わせて従業員に防災教育を実施し、訓練の目的と企業の災害対策についての理解を深めます。

防災教育には作成したマニュアルを使用するほか、自治体や消防署などが行っているe-ラーニングの実施も有効です。

 
 

  1. 防災点検項目の実施

チェックを行う

日常的に防災についての点検を実施し、従業員が見回りやチェックを行う習慣をつけておきましょう。点検項目には以下のようなものがあります。

・      建物の土台や外観が老朽化していないか

・      外壁や壁、柱などが亀裂で落下するおそれがないか

・      キャビネットや戸棚などに落下するおそれのあるものが置かれていないか

・      廊下や階段・非常口にものが置かれていないか

・      火器設備の付近は整理整頓されているか

・      退室前にガスの元栓・電源をすべて確認しているか

・      消火器が指定の場所にあり、容易に持ち出せるか

 

  1. 建物のメンテナンス、社内の危機回避対策

定期的に耐震診断を受け、建物のメンテナンスを行い、必要に応じて補強計画を立てましょう。

また、書棚やパソコン、コピー機など、地震で転倒するおそれのあるものは固定し、滑り止めを設置するなどの対策を行ってください。

 

  1. 災害用物資の備蓄

災害に備えて備蓄を

東京都の「帰宅困難者対策条例」によると、企業には「従業員の3日分の飲料水、食糧その他災害時における必要な物資」を備蓄することが努力義務とされています。

特に都市部では昼間人口が非常に多いため、行政の支援ではすべてをカバーすることはできません。従業員については行政の備蓄を当てにせず、企業内でまかなえるよう備蓄を行います。

備蓄品はリストを作成し、定期的にチェックして確認や補充を行います。また、備蓄品や非常用物資は、机の下など各従業員がすぐに持ち出せる場所に保管します。

 

  1. 非常時持出品の管理、重要書類やデータの管理

非常時に持ち出す必要がある金品や文書を定め、特定の場所に保管しておきます。

重要な書類は耐火金庫などに保管し、万一に備えて原本と同一のものを事業所以外の場所に保管します。同時に被災する可能性の低い地域の銀行にある貸金庫などが安全でしょう。

重要なデータはCD-ROMやHDなどにバックアップを取り、非常時に電源が切れた場合のサーバーのバックアップも自動的に行うよう設定しておきます。

 

  1. 帰宅困難者対策

災害時には交通機関が停止し、帰宅できない従業員が多数発生することが想定されます。各従業員の帰宅経路をあらかじめ確認しておき、交通機関の状況の把握方法や、食料品や毛布の備蓄など、帰宅困難者に対する支援方法を定めておきます。

また、従業員が平素から、各自で運動靴や飲料水などを備えておくことも大切です。

 

  1. 地域との協力関係の確認

災害時の対応について、地域との取り決めをしておくと、いざという時にスムーズに協力関係を結ぶことができます。

避難場所の提供や、重機などの資機材やヘリコプター緊急離着陸場所の提供など、その企業にしか果たせない役割がある場合は、積極的に協力できるように態勢を整えておきましょう。

また、平時においても地域の防災訓練に協力し、備蓄倉庫の設置場所を提供するなど、さまざまな形で可能な限り地域社会と協力して信頼関係を築いておきましょう。

 

  1. BCP(事業継続計画)の策定と運用

BCP(Business Continuity Plan)とは、企業が災害などの緊急事態に遭遇した際に「事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画」(中小企業庁HPより)です。

緊急時に提供できるサービスのレベルや代替策を用意しておくことで、災害からの早期復活を計ります。また、災害時の顧客情報の競合会社への流出や、企業評価の低下などに対するリスクマネジメントになります。

BCPの策定と運用方法については、各省庁や経済団体などがガイドラインやマニュアルなどを公開していますので、業種や規模に合わせて参考にしてください。

 

おわりに

東日本大震災発生時は、多くの企業が貴重な人材や設備を失ったことで、事業の停止や廃業を余儀なくされました。また、直接被害がなくても、サプライチェーンの停止により製品やサービスの提供が滞り、その結果顧客が離れ、事業の縮小に追い込まれた企業もあります。

しかしあるメーカーの例では、自社工場の被災に加えて、サプライチェーンを支えている協力工場も被災し、金型や機械をすべて流失したものの、約4週間で復旧・再供給を開始したことが評価されて、海外からの受注の獲得に成功しました。

日本は昔から自然災害の多い国です。自然災害を未然に防ぐことはできませんが、事前の備えによって被害を最小限に食い止めることは可能です。

いざという時のため、しっかりと防災対策を行いましょう。

 

参考URL

内閣府-防災情報のページ

BCPなど企業の防災対策支援 | 調査・ガイドライン |東京商工会議所

企業による自治体及び住民団体との「地域防災協定」(減災への取組)

東日本大震災を踏まえた企業の事業継続への取組みに関する提言

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