日本の企業でも少しずつ普及?いま注目のシエスタ制度とは?
2014.10.17仕事 , 企業あなたの会社の昼休みはどのくらいですか?
昼休みの時間は1時間、という会社が日本では圧倒的に多数です。「仕事に追われている間に昼休みを取り損ねた!」という経験がある方も多いのではないでしょうか。
しかし近年、昼休みを長くとる「シエスタ制度」が注目を集めています。実際に導入している会社はまだまだ少数ですが、業務の効率化や従業員のパフォーマンス向上を考えるうえで注目され、徐々に普及してきています。
なぜ今シエスタ制度が注目されているのでしょうか。その起源や効果、実際にシエスタ制度を導入した企業の事例を紹介しながら、メリットとデメリットを考察していきます。
シエスタ制度とは
「シエスタ(siesta)」とはスペイン語でお昼ごろから夕方前までの時間帯を表す言葉で、「シエスタ制度」とは午後1~4時ごろに昼休憩をとるスペインの習慣のことを指します。日本では「シエスタ=お昼寝」という意味で捉えられている場合もありますが、昼休みの時間帯を長くとる制度のことなので、昼寝をせずに他のことをしていてもOKです。本を読んだり、リフレッシュするために散歩をしたり、ジムで体を動かしたり、時間の使い方は個人の自由です。
シエスタ制度の効果
シエスタ制度のもたらす効果として、以下のようなものがあります。
人間の生理現象に基づく効果
昼食を食べた後の午後、会議などの大事な業務中にもかかわらず睡魔に襲われる、といったことは誰にでも経験があると思います。
人間には「概日リズム」というものがあり、約24時間を一定の周期で変動する体内リズムのことです。このリズムが上昇している時間帯、人間の活動は活性化します。
概日リズムは、午前中に上昇し、正午付近には最も高くなります。そして、正午過ぎから低下し、午後4時を過ぎた頃からまた上昇し始めます。つまり、午後1時~4時頃は概日リズムの低下により、注意力や判断力、認知力が著しく下がり、眠気が最も強くなる時間帯なのです。
シエスタ制度は、活動能力が低下するこの時間帯を休憩にあて、活動能力が上昇する時間帯から仕事を始めるという、人間の生理現象に基づいた効率的な制度なのです。
業務面への効果
プログラミング作業など、長時間続けていると集中力が切れてしまう業務があります。そのような業務を、疲労と眠気の中で無理をして続けても、効率が悪くなるばかりです。シエスタ制度で休憩時間を長くとり、心も体もリフレッシュして仕事に復帰することができれば、その後の業務効率を上げることができ、質の高い仕事をすることができます。
健康面への効果
コーヒーは適量の摂取であれば覚醒作用が働き、集中力を高めることができます。ですが、眠気を覚ますために飲み過ぎてしまうと、胸焼けや胃痛をもたらしたり、精神が高ぶり動悸や不整脈を起こしたりすることがあり、カフェイン中毒になってしまう可能性もあります。
シエスタ制度を利用して昼寝をすることができれば、業務再開の時間には目がしっかり冴え、コーヒーの量を抑えることができます。さらにコーヒー代も節約することができます。
また、昼寝には血圧を下げる効果があります。昼寝をする人が心臓病で死亡する確率は、昼寝をしない人より30%低いという研究結果もあります。
このようにシエスタ制度を活用して昼寝やリフレッシュをすることにより、仕事の効率を上げて生産性を高めるだけではなく、健康的に気分よく仕事に取り組むことができるのです。
シエスタ制度の導入事例
様々なシエスタ制度の導入事例をご紹介します。
大阪:ITベンチャー企業
創業10周年を迎えるこの企業では、平成19年からシエスタ制度を導入しています。業務は朝9時にスタートし、4時間働いた後、午後1時から午後4時までの3時間が昼休憩となります。その間は、電話対応も留守番電話になり、外部からはほとんど連絡が来なくなります。仮眠をとったり、ジムで体を動かしたり、映画を楽しんだり、従業員の過ごし方は様々です。その後、午後4時から再び業務に入り、4時間後の午後8時に業務終了となります。
このシエスタ制度を応用し、午後1時~午後4時までの休憩時間を仕事に使い、午後5~6時ごろ退社する、といった、柔軟な「フレックスタイム制」としても活用されています。
埼玉:リフォーム会社
2年前に昼寝制度を導入しています。所定の時間は決まっておらず、昼寝をするのに届出も必要ありません。従業員は眠くなったときにいつでも15~20分仮眠をとることができます。数字の計算をしたり、書類を読み込んだり、眠くなりやすい業務の前後に睡眠をとることで仕事がはかどって効率がよい、と従業員からは高評価です。
岐阜県庁
2011年に節電を目的としてシエスタ制度を職員に呼び掛けました。休憩中はオフィスから人が減るため、無駄な照明や電力消費を抑えることができます。終業時間は変わらず、休んだ分の時間数は年次休暇から引かれるため、利用するかどうかは従業員の自主性に委ねられる制度です。
ウィンストン・チャーチル
時代が異なりますが、ウィンストン・チャーチルは、第二次大戦の激務の中でも必ずベッドに入って昼寝をしていたそうです。それによって「1日が2日になる」と言い、実際に英国を勝利に導きました。
日本企業での導入における懸念点
メリットが多いように思えるシエスタ制度。導入している企業は少しずつ増えていますが、日本ではまだまだ少ないのが現状です。
一番の理由は、休憩の時間中、会社の業務が全面的に停止してしまうことでしょう。休憩の時間帯は連絡がとれない状況が続くため、顧客対応を必要とする企業や、取引先と密に連絡をとる必要がある業務では、サービスへの影響や取引の遅延が懸念されます。
また、「真面目」を美徳とする文化がある日本企業の社会では、日中に休憩を長くとり、ましてや昼寝をする、ということが悪いイメージとして捉えられる場合もあり、敬遠されているという理由もあります。
昼寝をすること自体の懸念点もあります。
長すぎる昼寝は夜の睡眠に影響を与え、寝不足を引き起こします。また深い眠りに入ってから急に起こされると、眠気が残ってなかなか頭が働かず、しばらくは本調子で仕事ができません。年齢や個人差がありますが、深い眠りに入るには、若い人で20分ほど、高齢者で30~40分でとされています。従業員自身が自分で適切な睡眠時間を管理できなくては、逆に業務に悪影響をおよぼします。
おわりに
シエスタ制度は「業務の効率化」「生産性の向上」という面で、従業員のパフォーマンスを向上させる有効な制度といえます。ですが、導入の難しさなどから、現在の日本の企業の状況においては、すぐにすべての企業で導入できるものではありません。今後、IT企業や技術・商品を開発する企業などを中心として導入事例が増え、その効果が証明されて、徐々に普及していくことが期待されています。
日本の企業は先進国に比べ、産休や育児休暇などの制度がまだまだ整っていないといえます。
従業員のライフワークバランス(仕事と生活の調和)の向上を目指して勤務制度を整えることは、今後、企業の成長と生産性向上を考えるうえで求められる課題の一つです。
あなたの会社でもシエスタ制度の導入を検討してみてはいかがでしょうか?
参考URL
シエスタ制度とは?メリットと効果を検証!日本の企業も採用! | Trendista21(トレンディスタ21)
【わが社のオキテ】昼休み3時間「仮眠休憩=シエスタ」制度を実践するITベンチャーの“ポリシー”(3/3ページ) – MSN産経west
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